ユネスコ世界遺産入門

ユネスコ世界遺産という言葉、みなさんも時折耳にしたことはあるのではないでしょうか。
もじどおり、”世界の価値ある遺産を守ろう”というものですが、
ここでは、その始まりや種類などについて簡単にお話させて頂きたいと思います。

◆ユネスコ世界遺産のはじまり
1950年代前半、当時のエジプト大統領ナセルは、ナイル川の氾濫防止と灌漑・
生活用水の確保、発電を目的に、ダムの建設を計画しました。
このダムによる人口湖は長さ500km以上におよび、数多くの遺跡群、
特にアブ・シンベルが水没することを意味しました。

そこで、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は、水没遺跡救済アピールを展開し、
世界50か国以上の援助表明を受け、アブ・シンベルを周囲の岩窟ごと移動するという
人類史上かつてない救済プロジェクトを開始しました。
これが”世界の価値ある遺産を守ろう”というユネスコの活動の始まりです。

その後、1972年に開催された第17回ユネスコ総会において
世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約、すなわち世界遺産条約が
採択され、世界遺産条約はその後世界中に広がりました。

◆世界遺産は一般的に

文化遺産:建築物や遺跡など人類が造り出した文化的な物件
自然遺産:大自然の景観や貴重な生態系など自然の物件
複合遺産:文化遺産・自然遺産双方の価値を持つ物件
の3つに分類されています。

日本国内では、
原爆ドーム・法隆寺近隣の仏教建造物・姫路城などが文化遺産に登録され、
屋久島・知床・白神山地などが自然遺産に登録されています。

また、2001年にタリバンによって一部破壊されたバーミヤン渓谷の考古遺跡群
などのように、世界遺産の中には、武力紛争、自然災害、環境の変化などによって
崩壊の危機にさらされているものもあります。
これを「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」と呼び、
現在約34件が登録されています。

この危機遺産リストの中には、カンボジアのアンコール遺跡のように内戦による破壊や
略奪により一時は壊滅的打撃を受けたものの、各国からの修復支援が行われた結果、
2004年に危機遺産から外された例もあります。

一方、ユダヤ人迫害の場となったアウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)や、
核爆発の爪あとを残す原爆ドーム(日本)などように、
忘れてはならない人類の記憶として登録された遺跡を、「負の遺産」と呼んでいます。

これら「負の遺産」を目の当たりにしたり、
誰もが戦争の悲惨さは分かっているはずなのに
なぜ、世界中で武力紛争やテロがなくならないのでしょうか。
人間という動物は”本当に愚かな生き物”だと思わざるをえません。

さて、世界各国に分布する世界遺産ですが、

アメリカ・カナダ・メキシコ・ブラジルなどの北米・中米・南米には、
自由の女神像(アメリカ)やガラパゴス諸島(エクアドル共和国)・イグアス国立公園
(ブラジル)などを含め、120ヶ所余が登録されています。

エジプトや南アフリカ共和国などのアフリカ地域には、
エジプトのピラミッド地帯や タンザニア連合共和国のキリマンジャロ国立公園などを
含め、100ヶ所余が登録されています。
また、このアフリカ地域には危機遺産が多いのも特徴です。

イタリア・ギリシャ・スペイン・ロシアなどのヨーロッパ地域には、
アウシュヴィッツ強制収容所(ポーランド)・バルテノン神殿(ギリシャ)・
ルーブル美術館(フランス)・ピサの斜塔(イタリア)やエジンバラ城(イギリス) などを含め、390ヶ所余が登録されています。
やはり、古代文化の中心だったせいでしょうか?

日本・中華人民共和国・インドなどのアジア地域には、
原爆ドーム(日本)・アンコール遺跡(カンボジア)・万里の長城(中華人民共和国)・
バーミヤン古代遺跡群(アフガニスタン)などを含め、160ヶ所余が登録されています。

オーストラリア・ ニュージーランド・ソロモン諸島のオセアニア地域には、
グレート・バリア・リーフ(オーストラリア)を含め、20ヶ所余が登録されています。

国別にみますと、登録数が多い順にイタリア(39ヶ所)・スペイン(37ヶ所)・
中国(31ヶ所)・ドイツ(29ヶ所)・フランス(28ヶ所)で、
ちなみに日本は現在13ヶ所が世界遺産に登録されています。

いずれも、先人から守り継がれてきた地球の宝物ですから大切にしていきたいものです

  • 2015 10.08
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